イベント考察

チクチク言葉に揺れる時代~巨大化した地下アイドル現場が生んだ新しい葛藤~

先日、あるアイドルが美容師の方から「地下ですか?地上ですか?」と聞かれ、その後もチクチクとした言葉をかけられたというポストが話題となりました。その内容を見て、多くの方がさまざまな意見を寄せていたのが印象的でした。

実際には、単純に「地下か地上か」という分類だけの話ではなかったとのことですが、それでもこの言葉が強く反応を呼んだという事実には、大きな意味があるように感じます。

今回はこの出来事について、自分なりの感覚を整理しながら述べてみたいと思います。

結論から申し上げますと、
このような出来事は、どこまでいっても「受け取り手の本人次第」であると感じています。

もちろん、相手の言葉遣いや態度が配慮に欠けていた可能性もあります。しかし同時に、同じ言葉をかけられたとしても、それをどう受け止めるかは人によって大きく異なります。
気にせず流せる人もいれば、深く傷ついてしまう人もいます。この差は、単に言葉そのものではなく、
「自分自身の現在地をどう認識しているか」によって変わるのではないでしょうか。

そして今回の議論を見ていてもう一つ感じたのは、「地下アイドル」という言葉自体の認識が、広く社会に浸透してきたということです。

グループ名は伏せますが、そのアイドルが所属するグループは、分類上はいわゆる地下アイドルと呼ばれる存在です。
当該のアイドルグループは、自分も何度かライブを拝見したことがあります。
非常に勢いがあり、観客の熱量も高く、今まさに登り調子のグループであると感じています。
SSAでの単独ライブを成功させた実績もあり、実力・人気ともに確かなものがあります。
そのような状況の中で、本人が感じたのは「下に見られた」という感覚でした。
ここには非常に繊細で重要な問題があるように思います。
おそらくですが、「地下アイドルとして」ではなく、「ひとつのグループとして」見てほしいという思いがあったのではないでしょうか。

つまり、“地下”という枠組みで分類されるのではなく、そのグループ固有の価値や努力を見てほしい、
という感覚です。
これは、活動に真剣に向き合い、努力を積み重ねている演者ほど強く抱く感情なのかもしれません。

実際、このような感覚を持つ演者は一定数存在します。また、「地下アイドル」という言葉そのものがチクチク言葉であると感じる方もいるようです。

しかし一方で、「地上アイドル」という言葉が常に肯定的な意味を持つかというと、決してそうとは限りません。

たとえば、かつて大きな舞台に立っていたアイドルが、その後地下アイドルとして活動しながら、
生き生きと日々を過ごしている姿もあります。
また、地上グループを卒業し、ソロとして新たな道を歩み、自分らしい表現を続けている方もいます。

そうした方々に共通しているのは、「今の自分の立場を真摯に受け止めている」という点です。

分類や肩書きにとらわれるのではなく、「今ここにいる自分」を基準に行動しているのです。
その結果、多くの共感を生み、SNS上でバズを起こしている方も少なくありません。

要するに、本質は「地下か地上か」という言葉そのものではなく、「そこにいる自分をどう受け止めているか」という点にあるのだと思います。

同じ場所に立っていても、自信を持っている人は、外部の言葉に大きく揺さぶられることはありません。
一方で、自分の立ち位置に迷いや不安があるときほど、外部の言葉は鋭く突き刺さります。

では、なぜこのような状況が生まれるようになったのでしょうか。

個人的には、「地下アイドル」という存在そのものが巨大化したことが、
大きな要因の一つであると感じています。
現在では、グループの数は非常に多くなり、東京・名古屋・大阪といった三大都市では、週末はもちろん、
平日であってもライブイベントが開催されています。
ライブハウスには日々新しいグループが出演し、多くの演者がステージに立っています。
これは裏を返せば、地下アイドルという存在が、それだけ一般化し、「特別なもの」ではなくなってきたことを意味しています。
裾野が広がり、多くの人がこの世界を目指すようになったことで、さまざまな価値観や認識が生まれました。そしてそれに伴い、「地下」という言葉に対する受け止め方も、人によって大きく異なるようになったのだと思います。

この流れを見ていると、ふとアメリカのメジャーリーグの話を思い出します。

かつては24球団だったものが、現在では30球団にまで拡大しました。
その過程で、「球団数が増えたことでレベルが下がったのではないか」という議論が生まれたこともあります。
しかし実際には、競技人口が増え、機会が増えたことで、より多くの人が夢を目指せる環境が整ったとも言えます。

地下アイドルの世界も、これと似た構造を持っているように感じます。以前は、地下アイドルという存在そのものが少なく、そこに立てる人も限られていました。しかし現在では、「なりたい職業」「目指す道」として、多くの人が選ぶ時代になっています。

その結果、社会の中での認知度が上がり、一般の方がその存在について言及する機会も増えました。
今回のような発言が注目を集めるのも、地下アイドルがそれだけ身近な存在になった証拠なのかもしれません。

今後、この流れが止まることはないでしょう。
むしろ、地下アイドルはさらに職業としての側面を強め、多様な形で発展していくと考えられます。
その中で、演者自身がどのように自分の立場を受け止め、どのように行動していくのか。
そして、周囲がどのようにその存在を理解していくのか。

これらは、今後ますます重要なテーマになっていくと感じています。言葉そのものに力があるのではなく、その言葉をどう意味づけるかが、本当の意味での差を生むのではないでしょうか。
地下か地上かという分類を超え、その人自身、そのグループ自身が持つ価値が、自然と認識される状態。そこに到達したとき、チクチク言葉は、もはや意味を持たなくなるのだと思います。
今回の出来事は、単なる一つのポストではなく、地下アイドルという存在が新しい段階に入ったことを示す象徴的な出来事であったのかもしれません。

今後もこの変化を、ひとりの現場に立つ者として、静かに見守っていきたいと思います。
今回も最後までご覧いただき、ありがとうございました。
よろしければ皆様の感想をリプや引用にて教えて下さい。宜しくお願いします。

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