イントロダクション
最近、さまざまな地下アイドルの現場を見ている中で、強く感じることがあります。それは「表題曲を超えられるグループは、実はかなり少ない」という現実です。
多くのグループには「この曲といえばこのグループ」と言われる代表曲、いわゆる表題曲が存在します。デビュー時や初期に生まれた楽曲で、今もなお現場で一番盛り上がり、フロアの熱量を一気に引き上げる存在です。
しかし、その一曲を越える楽曲がその後に生まれるかというと、実際にはかなり難しいように感じます。
なぜ最初に売れた曲の印象はここまで強く残り、それ以上が生まれにくいのか。今回はその理由について、自分なりの視点で考察してみたいと思います。
売れる曲が生まれる二つのパターン
まず、「売れる曲」や「代表曲」が生まれるパターンには、大きく分けて二つあると自分は考えています。
一つ目は、誰もが知るような形で広く流行るケースです。メロディや歌詞が覚えやすく、初見でも耳に残りやすい。SNSや動画をきっかけに自然と拡散され、グループを知らない人の耳にも届いていく。いわゆる王道のヒットパターンです。
二つ目は、コールや特徴的な動作、ヲタ芸などを通じて現場で流行るケースです。
楽曲そのものに加えて、フロアとの一体感が生まれ、ライブ空間の中で完成していくタイプの曲だと言えます。
ここで重要なのは、後者のパターンは演者側だけでは決して成立しないという点です。フロアのヲタクがその曲をどう受け取り、どう楽しみ、
どう広げていくか。そこまで含めて初めて「売れる曲」になります。
たとえ派手な振り付けやコールがなくても、イントロが流れただけでフロアから地鳴りのような歓声が起こる曲があります。
それはまさに、演者とフロアの両方の熱量が噛み合った結果です。
つまり、表題曲が生まれる背景には、楽曲そのものの力だけでなく、演者とフロアの熱量が同時に高まる「奇跡的なタイミング」が存在していると感じます。
では、なぜ二曲目以降は難しくなるのか
ここからが本題です。
なぜ表題曲を生み出したあと、二曲目、三曲目でそれを超えるのが難しくなるのでしょうか。
自分は、その理由は大きく分けて「作り手の熱量」と「フロアの熱量」の二つにあると考えています。
作り手の熱量という問題
まず、楽曲を作る側の視点です。
グループが動き出したばかりの頃、作り手の熱量は非常に高いものです。
まだ何者でもない状態だからこそ、「この一曲で何かを変えたい」「絶対に刺さるものを作りたい」
という強い思いが込められます。
その結果、運良く、あるいは必然的に売れる曲が生まれます。そして、その曲は一定期間、何度も何度も擦られます。ライブの定番曲となり、グループの顔として使われ続けるのです。
その間に、グループは少しずつ形作られていきます。メンバーの立ち位置やファン層、現場の空気感。すべてがその表題曲を中心に構築されていきます。
ここで問題になるのが、「次の一曲」を作る段階です。
作り手は当然、前作を意識せざるを得ません。売れた曲がベースとなり、「これを超えるもの」を目指すことになります。
しかし、一度成功した型を超えるのは簡単ではありません。
一回目は誰もが真剣になりますが、二回目となると、よほどの危機感や切実な思いがなければ、最初と同じ熱量を維持するのは難しいのが現実です。
その結果、「そこそこ良い曲」「そこそこ盛り上がる曲」は生まれますが、
表題曲を超えるほどの爆発力を持つ楽曲は生まれにくくなってしまいます。
フロアの熱量が下がる瞬間
次に、フロア側の問題です。
グループが初めて大きな舞台に立つ、人気が出始める。そうした節目の時期には、ヲタク側も強い熱量を持って現場に通います。
しかし、何かを達成した瞬間、フロアでは別の変化が起こります。それは「消えていくヲタクが必ず出てくる」という現象です。
金銭的に無理をしていた人、時間を無理やり捻出して通っていた人ほど、その反動は大きくなります。
燃え尽きてしまったり、急に気持ちが冷めたり、あるいは心身のバランスを崩して現場から離れてしまう人もいます。
こうして、表題曲を一緒に育てたフロアの熱量は残る一方で、それ以上のエネルギーを新しい曲に注げる人が減っていきます。結果として、二曲目以降が同じ規模で盛り上がることは、どうしても難しくなってしまうのです。
流行が固定化される地下アイドルの現状
今も多くの地下アイドルグループが生まれ、日々現場は賑わっています。
盛り上がっている曲、楽しい曲も数多く存在します。
しかし、「ほとんどの人が知っている曲」となると、話は別です。
自分の感覚では、そうした曲の多くは、5年以上前から流れ続けているものが中心だと感じています。
それだけ、一度生まれた表題曲の壁は高く、簡単には更新されないということなのでしょう。
それでも、新しい流行を待ちたい
とはいえ、自分は悲観しているわけではありません。地下アイドルという文化は、常に変化と挑戦を繰り返してきました。
これから先、どのような形で新しい流行が生まれるのか。
地下で爆発的に広まり、やがて地上にまで届くような楽曲やグループが現れるのか。
その瞬間に立ち会えることを楽しみに、これからも現場を見続けていきたいと思います。
今回も最後までご覧頂きありがとうございました。

