イントロダクション
地上→地下は片道切符?
~帰れなくなる3つの理由を17年目線で解説~
今回は、地上現場から地下現場へ足を踏み入れた人が、なぜ元の場所に帰りづらくなるのかを解説します。
自分はアイドル現場、夏フェス、声優現場、街のローカルイベントまで、あらゆるフィールドを渡り歩いてきました。大箱なら東京ドームやひたちなか海浜公園。
小箱なら「50人入れば酸素薄い」レベルの会場でフロア最前に陣取り、ヲタ芸を全力で打ってきました。出発点は、カメラが回りDVDになるようなビッグライブ。
その後、いわゆる“地下”と呼ばれる現場へシフトしました。
両方を体験して強く感じたのは、地下アイドル現場を味わった人ほど地上の現場へUターンしづらく、しかもオタクをやめにくいという事実です。
なぜ地下に行くと戻れないのか?。
今回はその構造を解説します。
理由は自由度と毎週開催
自分が考える「地下から戻れない」理由は、この3点です。
1物販の“人間距離”が近すぎるから
2.ライブ体験の“自由度”が高すぎるから
3“毎週開催”が感覚を心地よく麻痺させるから
順番に解説します。
・物販における距離感
多くの人を地下に落とす一撃は、ここだと思います。
自分は声優現場スタートですが、当時足を運んでいた水樹奈々さんの現場で会話・握手ができたのはたった一度。しかも自分がハマった頃は、日本武道館やさいたまスーパーアリーナを開催されていた時期でした。
その“一度”に当たれたのは、今思えばかなりの強運かもしれません。
対して、初めて潜った地下アイドルの現場。初日、初対面の物販特典で?まさかのビンタ。
極端ですが、この“至近距離”は感覚を一瞬で塗り替えます。
規模にもよりますが、今では千円の物販で普通に会話が成立するのが主流。
しかもチケット代が無料の場合もあり、物販を足しても地上より総額は安い事が多いです。
結果、物販に通い、会話が重なり、関係が育つ。
ここで効くのが“単純接触効果”。会うほど好きになる、印象が上がる心理学の定番です。
この仕組みが強力に働き、地下にハマる。これが第1の理由です。
・ライブにおける自由さ
地上が巨大化すると、会場は球場やスタジアムになります。
自分の可動域は50cm×50cm、もしくはパイプ椅子の座面サイズに収まる場合が多くなります。最初は豪華な照明、好きな曲、視界いっぱいの推し、すべてが眩しくきらびやかに感じます。ですが、人は慣れる生き物。視覚のごちそうは、やがて満腹になります。
友人と参戦するタイプほど、相方が欠けると足が遠のく傾向も強い。一方、地下は基本オールスタンディング。屋外なら横にも縦にも広い。
そのなかで熱いコール、ヲタ芸、ダイブやモッシュ、身体ごと没入する体験は、また来たい欲を強烈に喚起します。
自分はそこで「理想のヲタ芸」と「強さ」を追い続けてきました。こういう“探求型オタク”が一定数、生まれると感じます。一度この自由と没入を知ると、座面サイズの世界へは戻りにくい。しかも最近は“ご当地スネイク”や“インドダンス”などもSNSでバズる傾向にあります。参加人口が増え、スキルもインフレ。もはや半分スポーツです。
「この人とやり合いたい」という対戦欲が芽生え、気づけば定期参戦ループ。これが第2の理由です。
毎週行われるライブで感覚の麻痺
最近、古参の知人に「去年と全然動きが違う」と言われることが増えました。毎週、意識的に現場を探し、参戦。得た気づきを鍛錬し、翌週にフィードバック。
これを17年。ヲタ芸前、地上を回っていた頃は、ツアーは年2回+単発のビッグイベント。つまり“3ヶ月に1回のご褒美”です。地下イベントに参加した瞬間、日常が変わり毎週末は現場。時には平日にも参加します。
3ヶ月に1回→毎週。
この切り替えは、“物販で推しに会える人”にとってハマらないはずがありません。激しいヲタ芸をしなくてもイベント会場にいるだけで、最低限の運動にもなる。生理的にも説明がつきます。
運動でセロトニンが出て、心が安定する。物販での交流はオキシトシンが出て、脳の疲れをやわらげる。ライブの達成感でドーパミンが湧き、疲労軽減のエンドルフィンも分泌。
この4つの“ご褒美物質”が、毎週のようにパッケージで手に入る。毎週これを求め、イベント現場に足を運ぶようになりました。
おわりに
いかがだったでしょうか。
地上のアイドル現場では1年もしないうちに見なくなる人も多かったけれど、地下では“10年選手”がザラにいます。一回のチケット代は安く、心身は健やかになる。しかも物語は濃くなる。多くの人がハマるのは理にかなっていると思います。
自分自身はヲタ芸を追求することで日常生活も驚くほど好転しました。
皆様も日々のモチベになる推しに出会う。仲間と一緒に参加するイベントが楽しい、イベント前後の飲み方が楽しくて日々の仕事の原動力になっている方も多いのではないでしょうか。
そんな皆様と現場で会い、一緒にライブを楽しめる日があれば、ぜひ対戦お願いします!
今回も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。