ヲタク考察

やらされるより、湧き上がる~ヲタクが作る『自然発生コール』の真価~

イントロダクション

ライブ会場に響き渡る「コール」。
それはファンがアイドルに向けて送る“応援の形”であり、ステージの一部でもあります。

先日昭和アイドルの方々が多数出演されるイベントに参加して来ました。
30年以上は応援されているであろう方々のコールは魂がこもっており、応援団があった昭和の時代の趣きを体感できました。

その後、今の地下アイドル現場を訪れると昭和とは違う熱量に改めて今のアイドルシーンの楽しさを感じました。

昭和と令和。形や熱量は違えど、熱量込めてやっているコールは見ていても、自分がやっても楽しいと感じました。

これを踏まえ、今回は「コールは自然と湧き出るものがベスト」というテーマで、コールの本質と今後の展望について考えてみます。

コールは“自然発生”が理想

まず大切なのは、「コールは強制されるものではない」という点です。
本来のコールとは、ステージ上の熱量や曲の流れに引っ張られて、思わず口から出てしまう“自然発生的な声”のことです。

演者がステージから煽ることで起きるコールもあるのは承知しています。
しかし、あくまでファンの”気持ち”が先にあり、その結果として湧き上がる声が理想です。
観客の中から自然と生まれるコールほど、空間全体が一体となる瞬間はありません。

それが現在の「コールアイドル」と呼ばれるジャンルの本質でもあります。
ステージ上のアイドルと、フロアのファンが言葉ではなく“熱”でつながる。
この一体感こそ、他のジャンルにはない地下アイドルライブの醍醐味です。

「やってほしいコール」は楽しくない

一方で、最近では“コールをやってもらう前提”でライブを設計するケースも見られます。
例えば、メンバーがマイク越しに「おいおい、いくよ!」とさけんだり、MIXの発動を誘導するケースです。

もちろん、新規ファンや初めて現場に来た人には分かりやすく、間口を広げる効果はあります。
ただし、それが過度になると“義務的なコール”に変わってしまいます。
「やらなきゃいけない」「覚えなきゃいけない」と思われた瞬間、ファンの楽しさが半減してしまうのです。

コールは“広がる力”を持っている

コールの魅力は、ステージを盛り上げるだけでなく“外に広がる力”を持っていることです。
イベントで他のアイドルのファンがそのコールを耳にした時、「あの現場、楽しそう!」と思うことがあります。この“楽しそう”が、新たなファンを呼び込む第一歩になります。

つまり、コールは単なる盛り上げの手段ではなく、グループの知名度と集客を支える重要な要素です。
ライブ動画やSNSの切り抜きでコールが自然と認知されれば、見た人の印象にも残ります。

「名前は知らないけど、あのコールの現場だよね」と認識されることもあるでしょう。

今、アイドルが増え続けている中で、ファンの声が“グループの個性”を伝える時代になっていると個人的には感じます。

なぜ今、コールが大事なのか

現在のアイドルシーンでは、新しいグループが次々とデビューしています。
一方で、わずか数ヶ月で活動を終えるグループも少なくありません。
競争が激しく、SNS上でも注目を集めるのが難しい中、コールは“差別化の武器”にもなります。

演者の魅力だけでなく、ファンの一体感がコンテンツになる時代。
ステージと客席が作る「空気」がブランド化されることで、リピーターが増え、ファン層が広がっていきます。

コールが自然と揃う現場は、「行けば楽しい」という確信を与えます。この“安心感”が、アイドルにとって最大の財産になります。

身内ノリにならない工夫が必要

とはいえ、コールには弱点もあります。それが「身内ノリ化」です。

特定のファンしか分からないフレーズや、内輪で作った掛け声が増えると、新規の人が入りづらくなります。「楽しそうだけど、ついていけない」と思われると、それだけで壁ができてしまいます。

理想は、初めて来た人でも雰囲気で“何となく”合わせられるコール。自然とリズムに乗り、声を出したくなる空間づくりが鍵です。

振りコピがそうであるように、コールも“真似しやすさ”が重要です。工夫しているグループではラミネートしたコール表をサッと掲げたり、お会計のトレイが毎回2枚は用意されている現場があります。
見よう見まねでできる簡単さこそが、文化の広がりを生みます。

「振りコピのように広がるコール」が理想

振りコピ(振り付けを真似る行為)は、演者が特に煽らなくても広まります。それは、見ていて“やってみたい”と思わせる魅力があるからです。

同じように、コールも「演者が言わなくても起こる」形が理想です。たとえば、ある曲が始まった瞬間に自然と特定のコールが起こる。
その流れが定着していくことで、ファンの一体感はより強くなります。

ステージ側が促さずとも、観客の中から熱が生まれる。そんな現場こそ、長く愛されるグループを育てます。

今後のアイドルシーンとコールの未来

今後、アイドルの数はさらに増えていくと予想されます。しかし、その分活動期間が短いグループも増えるでしょう。
そんな中で生き残るのは、ファンとの関係性を深く築けるグループではないでしょうか。
その象徴こそが「自然発生するコール」。
メンバーとファンが共に作り上げる空間が、楽しかったという記憶をファン以外の方にも残す。

短期間でも「この現場は最高だった」と言われる体験を作れるか。その鍵を握るのが、まさに“一体感のあるコール”だと考えます。

おわりに


コールとは、ファンの“熱”が形になったものです。強制でも、説明でもなく、「楽しい!」という気持ちが自然に声になる。その瞬間こそ、アイドルライブの最高の魅力です。

だからこそ、コールを作ることよりも、“コールしたくなる空間”を作ることが大切です。
演者もファンも、互いの熱を感じ合えるライブこそが、本当の意味での一体感を生みます。
今後もアイドルシーンは変化していくと感じますが、コールの文化がこれからも多くの現場で受け継がれていくことを願っています。
今回も最後までご覧頂きありがとう御座いました。

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