ヲタク考察

“好き”が人を賢くする――推し活がもたらす脳と心のアップデート

イントロダクション

先日、「推し活をしている人は頭が悪くなる」という記事を目にしました。

SNS上でも話題になっており、さまざまな意見が飛び交っていました。
記事のもとになった研究では、著名人やキャラクターを強く応援している人ほど「流動性知能(新しい問題を解決する力)」が低下しやすいという結果が示されていたそうです。

この結果だけを見ると、「やっぱり推し活って脳に悪いのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、自分はまったくそうは感じません。
むしろ、推し活は正しく取り組めば“頭を鍛える最高の場”になると考えています。

「流動性知能」と「結晶性知能」という2つの視点

まず、この記事で紹介されていた2つの知能について簡単に触れておきます。
「流動性知能」とは、新しい情報を処理したり、問題を論理的に解いたりする力のこと。
年齢とともに少しずつ衰える傾向があると言われています。
一方、「結晶性知能」とは、知識や経験を積み重ねて使いこなす力のこと。
人生経験が増えるほど強くなるとされています。

つまり今回の記事が言う「推し活で頭が悪くなる」というのは、
思考が受け身になり、流動性知能を使わなくなる状態を指しているのだと思います。
これは、「推しが好きだから言われるがままに動く」
「他の人が行くから自分も行く」といった、いわば“受動的な推し活”のことです。

主体的な推し活は「頭を使う」

一方で、自分の経験から言えば、推し活には驚くほど戦略性と判断力が求められる瞬間が多いです。
たとえば、ライブの日程調整、遠征の計画、予算の管理、体力配分、特典会での会話内容―どれも考えなしに行えるものではありません。
このような活動を長年続けているヲタクほど、むしろ思考力と分析力が鍛えられていると感じます。

さらに一歩踏み込むと、推し活の世界には“リーダー型のヲタク”がいます。
コールを考えたり、撮影ルールを整備したり、生誕祭を企画したりする人たちです。
彼らは、ある種の「マネジメント能力」や「交渉力」を持ち、グループをまとめて行動しています。古くは「親衛隊」と呼ばれる人たちもそうでした。
彼らは推しの安全を守るために警備をしたり、番組収録の際に客席を仕切ったりと、まるでプロジェクトマネージャーのような立ち回りをしていたのです。

こうした主体的な活動を行う人たちが“頭が悪くなる”とは到底思えません。
むしろ、彼らの知能は「結晶性知能」としてどんどん研ぎ澄まされていると感じます。

「受け身の推し活」は確かに危険

ただし、研究で指摘されているように、完全に受け身の推し活は注意が必要です。
「買わなきゃ」「行かなきゃ」「積まなきゃ」といった強迫観念的な行動は、
判断力を鈍らせ、思考停止に陥りやすいからです。
特にグッズやチェキに対して無計画にお金を使い、生活を圧迫するような状況は、確かに「知能が低下している状態」と言えるかもしれません。

しかしそれは“推し活が悪い”のではなく、バランスを失った推し方が脳に負担をかけているだけです。
自分の限界を理解し、計画を立てて行動することができれば、推し活はむしろ“脳を活性化する最高のツール”になります。

現代の推し活は「双方向」へ進化している

もうひとつ指摘したいのは、現代の推し活は過去のそれとはまったく性質が異なるという点です。
かつては演者とファンの距離が遠く、推しは“遠い存在”でした。
しかし、今はSNSを通して毎日のように情報を発信し、ファンと交流する時代です。
ライブ配信やオンライン特典会、ファンミーティングなど、推しと直接コミュニケーションを取れる機会も増えています。

この状況は、ファンの思考にも変化をもたらしました。
ただ見守るだけでなく、推しの成長や活動を一緒に考える「共創的な関係」へと進化しています。
つまり、現代の推し活は一方通行の感情消費ではなく、双方向の思考と対話の場になっているのです。

こうした環境の中で、推し活をしている人の多くは、SNS運用の知識や動画編集スキル、撮影スキル・文章力などを自然と身につけています。
これらはまさに「流動性知能」と「結晶性知能」の両方を使う行為であり、
学びと創造のサイクルが働いています。

推し活は“脳のトレーニング”になる

もう少し科学的な視点から見ても、推し活には脳に良い要素が多く含まれています。
好きなものに触れた時、脳はドーパミンを分泌します。
これは「やる気」や「集中力」を高め、記憶力にも良い影響を与える物質です。
ライブに行くために体を動かし、チケットを取るために情報を整理し、
イベント後に感想を共有する―これらの行動は、すべて脳の前頭前野を刺激する行為です。

また、推し活を通して他者と関わることで、コミュニケーション能力や
感情理解力も磨かれます。たとえば「推しの言葉の真意を汲み取る」
「他のファンと意見をすり合わせる」といった行動は、共感力と認知的柔軟性を高める絶好のトレーニングになります。

主体的に“楽しむ”ことがすべての鍵

今回の記事を読んで改めて感じたのは、推し活は受け身ではなく、
主体的に行うことが何より大切ということです。
盲目的にお金や時間を注ぐのではなく
「自分はなぜこの推しを応援しているのか」そうした問いを持ちながら行動することで、推し活は単なる娯楽から“自己成長のプロセス”へと変わります。

そしてそのプロセスこそが、流動性知能と結晶性知能の両方を鍛える最良の環境なのです。自分で考え、判断し、行動する。その積み重ねが、
推し活を通じて人を賢く、柔軟にしていくのだと思います。

おわりに:推し活は「生きる知恵」を磨く時間

推し活とは、誰かを応援することを通じて
自分自身の可能性を探す行為でもあります。
だからこそ、頭を悪くするどころか、むしろ「人生を賢く生きる力」を育ててくれると感じます。

自分自身もこれまでの活動を通して、
企画力・分析力・発信力など多くのスキルを身につけることができました。
それは“勉強”というより、“楽しみながら学んだ結果”でした。

これからも、自分は主体的に楽しむ推し活を続けていきたいと思います。
そして同じように、推し活を通じて自分を成長させているすべての人に役立つ情報を発信します。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

RELATED POST