ヲタク考察

17年現場を見て気づいた、「すぐに好き」と言う人が消えていく理由~燃え尽きるヲタクの共通点を解説~

イントロダクション

現場に長く通っていると、「すぐに好き」という言葉を口にするヲタクほど、気づけば姿を見かけなくなっている――そんな光景を何度も目にしてきました。
最初は誰よりも声を張り上げ、グッズを集め、最前列で応援していた人が、半年後にはもう別の現場に通っている。そんなケースは珍しくありません。
もちろん、「好き」と口にすること自体は悪いことではありません。
むしろ、その瞬間の感情を素直に表現できることは素晴らしいことです。
しかし、あまりに“瞬間の熱”に頼りすぎると、長く続かないことも多いのです。

今回は、自分がこれまで現場で見てきた
「すぐに好きと言うヲタクが燃え尽きやすい理由」について、いくつかのケースに分けて考えてみたいと思います。

一瞬でのめり込む人がなぜ早く離れていくのか

「飽きるのが早いヲタク」というのは、どのジャンルでも存在します。
1年も経たないうちに推しへの関心が薄れ、次の現場へと足を運ぶ。
こうしたタイプの人たちの特徴は、口癖のように「好き!」と繰り返すことです。
その“好き”には、瞬発力はありますが、持続力がありません。
なぜなら、その感情が「推しの魅力」ではなく、
「自分の満たされなさ」を埋めるために使われていることが多いからだと考えます。

瞬間沸点に頼りすぎると、燃え尽きやすい

このタイプのヲタクに共通しているのは、「瞬間沸点」
に頼りすぎていることです。
ライブで目が合った、SNSで返信をもらった、特典会で少し話せた。
その“瞬間の幸福”で一気にテンションが上がり、エネルギーをすべて使い切ってしまうのです。
そして、その熱が冷めたあとに「自分は何をしていたんだろう」と虚無感に襲われる。
いわゆる“燃え尽き症候群”の状態に陥ります。

一度燃え尽きてしまうと、再び同じような熱量で戻ってくるのは難しい。
特に、短期間で複数の現場を転々とするタイプの人ほど、
この傾向が強いように感じます。
現場では「いつも見かける人が突然来なくなる」というのは日常的な出来事ですが、
その裏にはこうした心理的な燃え尽きがあるのだと思います。

パターン①:プライベートのショックから一目惚れに走るタイプ

人は誰しも、生きていく中でショックな出来事や心の傷を抱えることがあります。
特に若い頃に受けたショックは、記憶の奥深くまで残るものです。
そうした時期に出会った「推し」や「アイドル」は、ある意味で“救い”のように感じられることがあります。

以前聞いた話では、フランスに競馬観戦へ行った男性がホテルで盗難に遭い、全財産を失って帰国。
その帰り道、秋葉原で見かけたAKB48に心を奪われ、そこからのめり込んでいったというエピソードがありました。
その方の当時の姿を自分は直接見ていませんが、その心情は容易に想像できます。
「失った分を埋めたい」「もう一度生きる意味を感じたい」――そんな思いで“推し”に出会い、
一気に火がついたのだと思います。

しかし、こうした「心の穴を埋める」形でのめり込むと、その熱は長く続かないことが多いです。
推しが自分の人生の一部になるよりも、「推しによって癒された記憶」だけが残り、
時間が経つと自然に現場から離れてしまうのです。

パターン②:目的を達成したら次へ行くタイプ

次に多いのが、「ある目的を達成するとすぐ次の現場へ行くタイプ」です。
このタイプはとても行動的で、熱中すると驚くほどの行動力を発揮します。
しかし、その原動力は“推しへの愛”というよりも、“自分の目標達成欲”に近いことが多いです。

たとえば、「推しに名前を覚えられる」「チェキで笑顔をもらう」
「フォロバをもらう」など、具体的な目的を設定して行動します。
そして、その目的が達成された瞬間、心の中で「もうやりきった」という達成感が生まれ、
別の現場へと移動してしまうのです。

まるで渡り鳥のように、目的を果たした場所を離れて次の場所へと飛び立つ。
そんな印象を受けます。
これはある意味で“効率的なヲタク”でもありますが、
同時に“持続しないヲタク”でもあります。

パターン③:一目惚れだが、ショックを経験していないタイプ

一方で、プライベートに特別な出来事がなく、
純粋に一目惚れで推しを好きになる人もいます。
このタイプは、最初のうちは楽しく現場を続けられる傾向があります。
しかし、ライブで嫌な思いをしたり、接触イベントで対応が期待と違ったりすると、
一気に気持ちが冷めてしまう。
「なんだか思っていたのと違う」と感じた瞬間、足が遠のいていくのです。

このタイプのヲタクは、推しを「理想の存在」として見てしまう傾向があります。
だからこそ、小さな現実のズレに耐えられず、感情が急速にしぼんでしまう。
言い換えれば、「理想が壊れた瞬間に恋が終わる」タイプです。

「好き」を言葉にする時代と、心のスキマ

これらの3パターンは一例に過ぎません。
ただ共通して言えるのは、今の時代が“情報過多”であり、
“心のスキマ”を埋める場が少なくなっているということです。
仕事や人間関係、SNSでの疲れ――そんな中で、イベントや推しに夢中になるのは
ごく自然な流れだと思います。
そして、心が揺さぶられた瞬間に思わず「好き!」と言ってしまうのも、人間らしい反応です。

しかし、その「好き」が自分を癒すための“薬”になってしまうと、効き目が切れた時にまた苦しくなる。
だからこそ、自分は「一時的な“好き”を責めるのではなく、どうすればその“好き”を穏やかに育てていけるか」
を考えることが大切だと思っています。

長く続けるために大切なこと

推し活を長く続けていくためには、燃え尽きないための「距離感づくり」が必要です。
推しに全力で向かうことも素敵ですが、時には一歩引いて
“自分の生活のリズム”を守ることも同じくらい大切です。
「好き」という感情は、無理に燃やすものではなく、ゆっくり温めるもの。
その温度を一定に保てる人こそ、長く現場に残るヲタクだと感じます。

おわりに

今の時代は、誰もが何かに疲れやすく、そして何かにすがりたくなる時代。
だからこそ、一瞬で燃え上がる“好き”が生まれるのも当然のこと。ただ、その火を長く灯し続けるためには、心の整え方と日々の過ごし方が大切だと思います。

自分自身もこれまで何度も燃え尽きかけた経験があります。
それでも、少しずつ距離を取りながら、自分なりのペースで現場を楽しむようになってからは、穏やかで幸せなものになりました。

これからも、そうした「長く続けるための考え方」を、現場での経験をもとに発信していきます。

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